感情の名前

  建設中の住宅街と高速道路に挟まれた路地はとても暗い。街灯が申し訳程度に立っている。カラスの森に棲んでいたカラスたちは何処へ行ったのだろう。街灯より遥かに明るい満月。直視すると目がくらんでぶよぶよと大きさが変わる。あまりにも完璧でかえって作り物のよう。そのせいか、帰宅中の街並み全てがジオラマに見えた。スーツを着て帰宅途中の男A。

 さておき。少し早く起きる習慣付けはなかなか良さそう。今日は2日目だから定着まではまだまだだけど。ついでに寒くて朝方に目が覚めて二度寝してしまったし。自分の行動の循環が作った習慣なのか作られた習慣なのかは考える価値があるかもしれない。作られた習慣の中で居るうちはそれが作られたものだと気付かない。

 これは具体例があって。食事とともに飲み物があるというのは給食もそうだし、実家でもそうだし飲食店でもそう。でも、最近気づくとお弁当の時と平日の夜ご飯時には飲み物なしで食べている。なんでそうなったかはよく分からないところ。たぶん食べる時間ではないときに水ばかり飲んでいるからだと思われる。飲み物なしでご飯とか考えられなかったなぁとふと内省した。水分と一緒に食事を採ると胃液が薄まって消化が悪くなるとか、食べ物を水で流し込むのは行儀が悪いという文化もあるようだし、きっとどっちでも良いのだろう。大事なのは、自分の当たり前がどれだけ当たり前でないかを考える機会があること。

 お酒はお供にするけど、むしろご飯がお供だと思う。酔いの邪魔にならない程度に美味しい物を食べる。これは習慣というより意志の話。

 作った習慣と作られた習慣の区別はきっとだいたいの人にとって意味はないと思う。効果としてはどちらもほぼ変わらないだろうし。思考とエネルギーのショートカットという意味では。何か有用なことについての習慣はだいたいが作らないとできない習慣でむしろエネルギー消費はたくさんある。でもエネルギーが消費されていると感じている間はまだ習慣になっていないような。僕は単に自分で決めた、自分が選んだことはえこひいきするとしているだけ。作られたものの場合は、何故作られたのだろうから再構成しない座りが悪い。

 今日も何故か感情がもやもやしていたのだけど、言語化したら「自分は知らないことが多すぎる」という焦燥感だった。こんなこと考えたらあかんと冷静な方の自分が宥める。物理的世界から退場したいっていう想念より質が悪い。自分にないものを見たらもう無限と言っても大して誇張じゃない程の途方ない世界。知らないじゃなくて知りたいならまだマシだけど。

 頻繁にもやもやしているなという感じだけど、感情ってそういう不可思議なもの。名前をつけるまではどんな意味もない。既に名前の付いている感情と比べて、どこが同じでどこがずれているかを見ながら慎重に名付けるもの。こういう考え方で感情を見ると、ますます感情はもともと在るものではなくなる。名前がつくまではどう扱って良いか分からない、行動の原動力にもならないただのもやもやした状態というか波のようなものでしかない。そうして名前をつけてしまうと言葉という器に押し込めた感情になる。語彙と感情の関係は、語彙が少ないと感情として表現できるバリエーションが内側でも外側でも限定されるというところにあるのでは。

 良く分からないものって自分の内側にあろうが外側にあろうが気持ち悪いからなんとか名前をつけて分かったものにする作用がありそう。感情の最初というより、ある程度バリエーションが増えてからの話。僕は良く分からないものに忌避する感情がない、ことはないけど、まぁ放置するくらいはできる。こういった選別の後に月並みな表現しかできない感情というのも確かに在るに違いない。やれやれ。自分こんなこと考えていたのかという感じ。

 感情の始まりを探ったところでいつものごとくきっと意味はないのだけど、感情が言葉の持ちようだとしたら程度は分からずともコントロールはできるってことで。だとしたら自分の変化にとって邪魔な感情は抑えてしまうということもできるということ。逆に感情に全てを委ねてしまうこともできるし、または相手にとって不都合だと自分で決めてしまえば自分の中で完全封殺もできる。だったら自在だよなぁ。

 でもここまで自分を観測してしまうと、観測された自分はいったい何だろうという気もする。観測者が作者の創作物に近いような。いや、自分なんて今まで影響を受けてきた対象群の合成物だと考えれば大した違いはないけど。まぁごくごく個人的なところだとどちらの考え方もなかなかしっくりくるけど。

今日はなんとなくまとまった思考だった。本の話をする暇もあまりなく。十二国記はそろそろ終盤でなんだか寂しや。次は何を読もうかね。小説枠は全然考えてないなぁ。詩枠はマラルメにしようと思っているけど。まぁしかるべきに呼ばれるか。

ではここまで。おやすみなさい。

 

良い夢を!